書籍案内

教師養成についての考察

[著者]
エドゥアルト・シュプランガー
[訳者]
黒澤 英典   武蔵大学名誉教授・武蔵大学白雉教育会名誉顧問

目 次
 まえがき
1 陶冶
2 陶冶価値
3 陶冶性
4 学問、技術、陶冶
5 総合大学、工業大学、教師養成大学
6 教育大学
7 競争―総合大学か教育大学か
 訳者あとがき

内容紹介
 本書『教師養成についての考察』は、1920年にドイツで刊行されてからすでに100年余りを経過しているが、20世紀初頭の教師のもつべき資質と課題についての論究が、今日でも教師養成の根幹にふれる不易のものであると確信できる。訳者は、シュプランガーの考察を「青少年を教育する教師の資質・力量は、文化価値に対する深い理解と造詣が求められる。その一方、教師が養成されていく課程では、広い心をもった人間として養成されることが求められる。さらに、価値ある人間的展開のヒューマニスティックな理想をもった教師が養成されることが喫緊の課題である」と読み解いている。まさに今こそ、危機迫る日本における教師養成にかかわるすべての関係者に読んでほしい。

版元から一言
 第二次世界大戦へ突き進むナチス政権の誕生前夜のドイツで刊行されてから100年余り、これまで邦訳されてこなかった埋もれた名著が今まさに放たれる!
 ひとりの教師として、さらに教育学者として、戦後における教師のあり方とその養成に心血を注いできた訳者が、学生時代から常に心の支えとなる指針として携えてきたのがシュプランガーによる原書です。日本教師教育学会設立の発起人でもある訳者が、社会的環境の激動の狭間で苦闘する教員養成の現場に向けて、教師のあり方と養成方法の再構築が問われている今日だからこそ、本書で考察される教育の原点として「陶冶」に立ち戻り、その意義を再確認する必要性を説いています。

著者
エドゥアルト・シュプランガー Eduard Spranger (1882-1963)
1882年 ベルリン生まれ:レアール・ギムナジュム(近代外国語を中心とした高等学校)/グラウェン僧院付属ギムナジウム(古典語中心とした文化高等学校)からベルリン大学でディルタイ(Wilhelm Dilthey;1833-1911)に師事
1911年 ライプツィヒ大学教授
1920年 ベルリン大学教授:ユダヤ人迫害などに抗議表明するも体制協力的態度
1936-7年 ドイツとの交換教授として来日:各地の大学や研究所で講義・講演
1945年 第二次世界大戦後にベルリン大学総長
1946年 チュービンゲン大学就任



訳者
黒澤 英典(くろさわ ひでふみ)
武蔵大学名誉教授(教育学・教育史・教師教育)・武蔵大学白雉教育会名誉顧問
◇略歴
1937年 埼玉県秩父郡小鹿野町(旧両神村)生まれ。
1945年 両神村国民学校2年で終戦を迎える。
1959年 埼玉大学教育学部卒業,埼玉県立浦和高等学校定時制蕨分校に勤務しながら,東京教育大学で教育哲学・教育史を学び,その後青山学院大学大学院入学・博士課程単位修得後退学,青山学院高等部教論を経て,1975年流通経済大学に着任。
1985年 武蔵大学入文学部教授(学部長)。この間,放送大学埼玉学習センター・東洋大学・中央大学・聖心女子大学・拓殖大学・茨城大学・武蔵野女子大学・東京外国語大学・高千穂商科大学・青山学院大学,北京大学高等教育科学研究所客員研究員・北京大学大学院日本文化研究センター等で主として教育学・教育史などを教える。
◇1985~2008年までの主な活動
日本教師教育学会創設発起人の一人として参画し,そのほか日中教育研究者交流会議委員・文部省教員資質向上協議会委員・東京都教員養成審議会委員・全国私立大学教職課程研究連絡協議会運営委員など,私立大学の教師養成に尽力する。
◇社会的活動
東京都練馬区生涯学習協議会委員・同地域教育力推進協議会会長・埼玉県生涯学習実践作文審査委員会委員長・白岡町総合振興計画審議会委員・白岡市環境審議会委員長・同教育委員会評価・点検委員など,さらに故郷小鹿野町教育委員会委員長を歴任。
◇主な著作
【単著】『教師のひと言の重さ―死刑囚の魂の回心』人言洞,2023年『ペスタロッチーに還れ―教育的格差・貧困・偏見に挑む』学文社,2018年/『戦後教育の源流』学文社,1995年/『私立大学の教師教育の課題と展望―21世紀の教師教育の創造的発展をめざして』学文社,2006年/『青少年の社会参加とリーダーのあり方』茨城県教育委員会,1982年ほか多数
【共編著】日本教師教育学会編〈日本教師教育学会創立10周年記念刊行【講座教師教育学】〉『第1巻教師とは』『第2巻教師をめざす』『第3巻教師として生きる』学文社,2002年/『初期社会科実践史研究』東京書籍,1982年/『信頼し合う教師と父母』ぎょうせい,1990年/『教師教育改革の実践的研究』全私教協,1992年/『教育実習の総合的研究』ぎょうせい,2002年/『公民教育』刊行委員会編(代表:黒澤英典)『雑誌公民教育』第1巻Ⅰ号(昭和6年4月)~ 終刊号第12巻7号(昭和17年7月)雄松堂書店,1995年ほか多数