書籍案内

社会教育・生涯学習入門

―誰ひとり置き去りにしない未来へ―
二ノ宮リムさち・朝岡幸彦 編著        
【社会教育・生涯学習の基本シリーズ】
A5判並製/160頁/ISBN978-4-910917-03-0/C3337  2023年3月1日刊行
定価2,200円[本体2,000円+税10%]           人言洞ウェブで購入

[編著者]
二ノ宮リム さち 東海大学スチューデントアチーブメントセンター准教授
朝岡 幸彦 東京農工大学農学部教授
[著者]
鈴木 敏正 北海道大学教育学部名誉教授
石山 雄貴 鳥取大学地域学部准教授
田開 寛太郎 松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科講師
伊東 静一 東京学芸大学非常勤講師
中沢 孝之 白河市立図書館館長
林  浩二 千葉県立中央博物館上席研究員

 本書は,SDGsの登場により広く社会にその価値が共有されつつある「誰ひとり置き去りにしない」「持続可能で包容的な社会」の実現に向けた道筋を見据えつつ,それを支える社会教育・生涯学習のありようを多角的に論じることをめざしています。社会教育・生涯学習を学び考えるすべての人に,基礎的かつ包括的な知識と,持続可能性へ向けた人と社会の変容・変革を導く学習・教育について考える機会を提供する入門書として,一人ひとりが人生を切り拓き社会づくりに参画する過程を支える生涯学習,そのための社会教育とはどうあるべきか,全10章の論考から全体像を提示しています。

目 次
序 章  誰ひとり置き去りにしない未来と社会教育・生涯学習
 第1節 持続可能な開発の理念と「誰ひとり置き去りにしない」
 第2節 SDG4と「誰ひとり置き去りにしない」社会教育・生涯学習
 第3節 社会参画を支えるシティズンシップの学び
 第4節 「対話」を通じた自己と社会の変革・変容と社会教育・生涯学習
 第5節 本書の構成
第1章  社会教育・生涯学習とは何か 理念
 第1節 戦後の民主化と社会教育
 第2節 グローバリゼーション時代の生涯学習
 第3節 ポスト・グローバリゼーション時代の「社会教育としての生涯学習」
 第4節 現代民主主義と社会教育・生涯学習の課題
第2章  社会教育・生涯学習はどう変わってきたか歴史
 第1節 それは平和から始まった
 第2節 経済成長の矛盾と社会教育実践の発展
 第3節 生涯学習政策の登場と終焉
 第4節 コロナ後の社会教育・生涯学習
第3章  社会教育・生涯学習の法と制度はどうつくられたのか法と制度
 第1節 教育基本法の理念と社会教育
 第2節 社会教育・生涯学習の法と理念
 第3節 社会教育・生涯学習の制度と施設
 第4節 新型コロナウイルス感染症のもとでの社会教育・生涯学習
第4章  社会教育・生涯学習を保障する財政をどう考えるか財政
 第1節 社会教育の市町村主義
 第2節 「公共施設マネジメント」による市町村財政の効率化・合理化
 第3節 社会教育費の状況とその脆弱性
 第4節 学ぶ権利をお互いに保障しあうシステムとしての社会教育財政へ
第5章  社会教育・生涯学習は地域をどう支えるか 地域づくり
 第1節 活力あふれるまち長野県松本市に学ぶ
 第2節 松本市の「公民館条件整備」への道
 第3節 松本市における地域づくりの展開
 第4節 松本らしい住民主体の地域づくり
 第5節 社会教育・生涯学習から地区自治のあるべき姿
第6章  公民館は市民の学びにどうかかわるのか公民館
 第1節 社会教育・生涯学習を支える施設としての公民館
 第2節 公民館職員としての専門性
 第3節 今後の公民館に求められる支援とは―機能と役割
第7章  図書館は市民の学びにどうかかわるのか 図書館
 第1節 社会教育施設としての図書館
 第2節 図書館職員の専門性
 第3節 図書館に求められる支援
第8章  博物館は市民の学びにどうかかわるのか博物館
 第1節 博物館とは
 第2節 博物館の現況と活動
 第3節 市民の学び/参加を支える博物館に向けて
終 章  ポストコロナ・SDGsの社会教育・生涯学習
 第1節 忘れられるパンデミックの記憶
 第2節 新型コロナを私たちはどう理解し,どう対応してきたのか
 第3節 「災害に向き合う教育」をどのように考えるか
 第4節 ポストコロナ社会のために

執筆者紹介
[編著者]
二ノ宮リム さち  東海大学スチューデントアチーブメントセンター准教授 [序章]
 同大学院人間環境学研究科兼任講師/環境サステナビリティ研究所所員。東京都昭島市社会教育委員。1990年代後半より国内外のNPO・行政・大学などで持続可能な開発のための教育(ESD)を推進。主な著書・訳書:『社会教育・生涯学習論』共著(学文社,2018),『民主主義を創り出す』共訳(東海大学出版会,2020),『知る・わかる・伝えるSDGs II』編著(学文社,2021)ほか。
朝岡 幸彦  東京農工大学農学部教授 [第2・3章・終章]
 博士(教育学)。共生社会システム学会会長。日本環境教育学会会長・日本社会教育学会常任理事/事務局長などを歴任。主著:『社会教育・生涯学習論』編著(学文社,2018),『こども環境学』監修(新星出版社,2021),『「学び」をとめない自治体の教育行政』編著(自治体研究社,2021),『知る・わかる・伝えるSDGs Ⅳ』編著(学文社,2022)ほか。
[著者]
鈴木 敏正  北海道大学教育学部名誉教授 [第1章]
 博士(教育学,農学)。元日本社会教育学会会長。主著:『現代教育計画論への道程』(大月書店,2008),『持続可能な発展の教育学』(東洋館出版社,2013),『生涯学習の教育学』(北樹出版,2014),『将来社会への学び』(筑波書房,2016),『「コロナ危機」を乗り越える将来社会論』(筑波書房,2020)ほか。
石山 雄貴  鳥取大学地域学部准教授 [第4章]
 2016年度東京農工大学連合農学研究科農林共生社会科学専攻修了。博士(学術)。主著:『五訂版 習うより慣れろの市町村財政分析』共著(自治体研究社,2021),『学校一斉休校は正しかったのか? 検証・新型コロナと教育』共著(筑波書房,2021)ほか。
田開 寛太郎  松本大学総合経営学部講師 [第5章]
 博士(農学)。日本環境教育学会事務局長。専門は,環境教育,自然共生システム,観光産業。主な論文:「中山間地域における公衆浴場の経営と利用実態に関する研究―長野県飯田市遠山郷かぐらの湯を事例に」共著,『地域総合研究』(松本大学,2022),「コウノトリの野生復帰における『共生』概念の変遷」『環境共生』(日本環境共生学会,2022)。
伊東 静一  東京学芸大学非常勤講師 [第6章]
 博士(農学)。明治大学客員研究員。元福生市公民館長。主著:『自然保護教育論』(筑波書房, 2008),『社会教育における評価』(東洋館出版社,2012),『社会教育経営のフロンティア』(玉川大学出版部,2019),『「学び」をとめない自治体の教育行政』(自治体研究社, 2021)ほか。
中沢 孝之  白河市立図書館館長 [第7章]
 図書館問題研究会委員長。主著:『みんなで考える こんなときどうするの?』編著(日本図書館協会,2014)。
林  浩二  千葉県立中央博物館上席研究員 [第8章]
 東邦大学理学部・星槎大学非常勤講師,日本植物園協会教育普及委員会委員,日本環境教育学会広報委員会委員。主著(共著):『インタープリター・トレーニング』(ナカニシヤ出版,2014),『環境の豊かさをもとめて』(昭和堂,1999)。「市民研通信」で連載「博物館と社会を考える」(オンライン公開)。

読者の皆さまへ
 本書『社会教育・生涯学習入門』は「社会教育・生涯学習の基本 シリーズ」の初巻です。本シリーズは,社会教育・生涯学習に携わる研究者および実践家,従事者等が取り組んでいる学術的研究ならびに活動実施の記録などに基づいて,その成果・実績・課題・展望などを分かりやすいテーマ設定と内容構成で社会に向けて発信するものです。
 パンデミックやウクライナ戦争などによりグローバル化・高度情報化が更に加速する世界情勢の中にある日本でも社会生活の流動性が進行し,目まぐるしく生活環境の不安定化が引き起こされています。これを鑑みて,本シリーズでは社会教育・生涯学習の今日的な情勢を適切に捉え問題意識をもった著者に広く門戸を開いて,社会教育・生涯学習において時宜を得たテーマを取り上げ,これまでの研究・実践のエビデンスに裏付けられた信頼のおける最新の論考によって展望していきます。
 本書は,シリーズを貫く理念の礎となる入門書と位置づけて上梓しました。是非とも本書をお読みいただき,今後の続巻にも是非ご期待ください。